大判例

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仙台高等裁判所 昭和33年(う)355号 判決

刑法第九六条ノ三第二項にいう公の入札における談合の主体は競争入札者に指名された者のみでなく、同条項の立法趣旨に鑑み、自らは工事の特殊技術等の故に形式的には競争入札者に指名されなくとも、自己の身代り的な者を立てて競争入札者の指名をうけた上、その者が落札者となつた暁にはその者の技術的監督下に事実上自ら工事を施行してその全利潤を自己におさめ、その一部をその者に与える特約の下に、自ら競争入札者一同に対して前記身代り的競争入札者に落札せしめるよう強く働きかけ、その結果一定の価格以下に付値しないことを協定するに至らしめて談合を支配した場合は、その者は競争入札者の実質を保有するものであるから、同条項にいう談合の主体たり得るものと解すべきである。

本件において、原判決挙示の鈴木栄蔵、坂本四郎、小沢一、高橋正典、被告人の各検察官に対する供述調書及び契約書(証第九号)によれば、被告人は土木建築請負業株式会社吉亀工業所の代表取締役で、同会社はさきに郡山市の施工にかかる浄水池駆体工事を請負い施行中であつたが、鉄筋不足等で約五七万余円の欠損が見込まれたので、同浄水池駆体の上塗防水工事を匿名で請負わせて貰いたい旨同市水道当局側に願つたが、防水工事は特殊技術を要するので別途に指名競争入札を行うとのことで断わられたため、被告人は防水剤ウオタータイトの特約販売店をしている関係から同防水剤の製造販売兼防水工事請負をしている株式会社日本セメント防水剤製造所仙台出張所をして身代り的に右競争入札者の指名をうけさせ、これが落札人となつた暁該工事施行から生ずる利潤で前記損害を埋合わせようと考えたこと(一七八丁裏、一七九丁表、二〇六丁裏、二〇七丁表、五三丁表乃至五四丁表)、被告人は昭和三二年五月下旬右日本セメント仙台出張所長鈴木栄蔵に連絡して競争入札者指名願を提出させて当時これが指名をうけると共に、右鈴木との間に、防水工事の施行に当つては請負名義人は日本セメント仙台出張所であるが、実際上の工事施行者は吉亀工業所であること、責任工事だから日本セメント仙台出張所は工事施行監督技師一名職人親方二名を派遣し、その他一切(足場、電気施設、人夫、セメント等)は吉亀工業所が引受けること、その利潤は全部吉亀工業所に任せ、日本セメント仙台出張所はその使用する防水剤ウオタータイトから上る利益で満足し、工事完成後に日本セメントの本社に対し一〇万円を出すこと、右防水工事に対する市の予定価格は二七〇万円位であるから日本セメント仙台出張所は一六〇万円で工事を竣工するよう努力すること等を内容とする特約をなしたこと(四七丁乃至四八丁、八四丁九一丁裏、六三丁乃至六四丁、一一八丁、一九〇丁乃至一九一丁、一九八丁裏)、一方被告人は右防水工事の請負人となる者は駆体工事を施行している被告人の会社と円満な提携を保たなければ工事を進められないことを利用し、右防水工事の競争入札者に指名された防水工事請負業者佐々木工業株式会社仙台出張所長小沢一、同じく山藤産業株式会社建材部主任高橋正典及び前記鈴木栄蔵を集めて、被告人自ら又は被告人の会社取締役で現場監督の坂本四郎を通じ、前記の事情を告げて鈴木栄蔵を落札者にするため他の競争者は、手を引くよう強く働きかけ、落札を要望した小沢に対しては現金二〇万円、あとから更に二〇万円を出すことにして、結局一同をして右目的のため一定の価格以下に付値しないことを同意せしめ、被告人自ら前記被告人の予測した市の工事予定価格に近接するように考慮し、且つ右鈴木を三名中最低とするように適宜定めた各人の第一回、第二回の入札価格を記入した紙片をそれぞれ右三名に手交し、右三名はその指示通りの価格で入札したものであること(八四丁、八八丁裏、九八丁乃至九九丁、三六丁、四一丁、五八丁乃至五九丁、六五丁乃至六九丁、一一八丁、一二四丁、一八八丁裏、一九四丁)、以上の各事実が認められる。

右に徴すれば、被告人は競争入札者の実質を保有し、他の競争入札者に働きかけて事実上談合を支配したものであるから、刑法第九六条ノ三第二項にいう談合の主体たり得るものと解すべく、所論のように単なる第三者を以て目することは到底できないところである。原判決も右に説明したような意味において被告人を談合行為の主体と認めた趣旨である。

されば、原判決には所論のような法令の解釈適用を誤つた違法は存しない。論旨は理由がない。

(裁判長裁判官 龍倉正治 裁判官 細野幸雄 裁判官 岡本二郎)

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